敷金の内容
敷金とは、賃貸借契約に基づいて借主が貸主に対して負う一切の債務を負担するために、契約締結時に貸主に差し入れる金銭をいいます。
通常、賃貸借契約が終了して、借主が建物を明け渡した後に、未払い賃料や、破損・汚損による修繕費等を差し引き計算して、残額が借主に支払われます。
原状回復費用
退去時の原状回復費用について、借主がどこまで負担するかについての基本的な考え方は以下の通りです。
すなわち、日常生活にともなって当然生じる程度の破損・汚損であれば、特約が無い限り借主が負担することはありません。貸主としては、これら自然の破損・汚損による修繕費も賃料設定において考慮に入れているはずだからです。しかし、これに反する特約を締結する事も可能であり、そのような特約も有効であると考えられています。
従来この点について、退去時の敷金清算や入居期間中の修繕を巡る紛争等、多くのトラブルが発生してきました。そこで、紛争の未然防止を図るため次のような都条例が制定されました。
東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例
平成16年3月31日
条例第95号
第1条(目的)
この条例は、宅地建物取引業者(宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号。以下、「法」という。)第2条第3号に規定する宅地建物取引業者をいう。以下同じ。)が、専ら居住を目的とする建物(建物の一部を含む。以下「住宅」という。)の賃貸借に伴い、あらかじめ明らかにすべき事項を定めること等により、住宅の賃貸借に係る紛争の防止を図り、もって都民の住生活の安定向上に寄与することを目的とする。
第2条(宅地建物取引業者の説明義務)
宅地建物取引業者は、住宅の賃貸借の代理又は媒介をする場合は、当該住宅を借りようとする者に対して法第35条第1項の規定により行う同項各号に掲げる事項の説明に併せて、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
一 退去時における住宅の損耗等の復旧並びに住宅の使用及び収益に必要な修繕に関し東京都規則(以下「規則」という。)で定める事項
二 前号に掲げるもののほか、住宅の賃貸借に係る紛争の防止を図るため、あらかじめ明らかにすべきこととして規則で定める事項
第3条(紛争の防止のための措置)
知事は、住宅の賃貸借に係る紛争の防止のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第4条(報告の聴取等)
知事は、この条例の施行に必要な限度において、宅地建物取引業者に対し、その業務に関する報告又は資料の提出を求めることができる。
第5条(指導及び勧告)
知事は、宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合は、当該宅地建物取引業者に対し、説明を行い、又は報告若しくは資料の提出をし、若しくは報告若しくは資料の内容を是正するよう指導及び勧告をすることができる。
一 第2条の規定による説明の全部又は一部を行わなかったとき。
二 前条の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をしたとき。
第6条(公表等)
知事は、前条の勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
2 知事は、前項の規定による公表をしようとする場合は、当該勧告を受けた者に対し、意見を述べ、証拠を提示する機会を与えるものとする。
第7条(委任)
この条例に規定するもののほか、この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。
附則
この条例は、平成16年10月1日から施行する。
東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例施行規則
平成16年3月31日
東京都規則第92号
第1条(趣旨)
この規則は、東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例(平成16年東京都条例題95号。以下「条例」という。)の施行について必要な事項を定めるものとする。
第2条(宅地建物取引業者の説明事項等)
条例第2条第1号の規則で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 退去時における住宅の損耗等の復旧については、当事者間の特約がある場合又は賃借人の責めに帰すべき事由により復旧の必要が生じた場合を除き、賃貸人が行うとされていること。
二 住宅の使用及び収益に必要な修繕については、当事者間の特約がある場合又は賃借人の責めに帰すべき事由により修繕の必要が生じた場合を除き、賃貸人が行うとされていること。
三 当該住宅の賃貸借契約において賃借人の負担となる事項
- 条例第2条第2号の規則で定める事項は、賃借人の入居期間中の設備等の修繕及び維持管理等に関する連絡先となる者の氏名(法人にあっては、その商号又は名称)及び住所(法人にあっては、その主たる事務所の所在地)とする。
- 知事は、宅地建物取引業者が条例第2条の規定による説明を適正に行うために必要な事項を示すものとする。
第3条(勧告)
条例第5条の勧告は、勧告書(別記様式)により行うものとする。
第4条(公表)
条例第6条第1項の規定による公表は、東京都広報への登載その他広く都民に周知する方法により行うものとする。
一 勧告を受けた者の氏名(法人にあっては、その商号又は名称及び代表者の氏名)
二 勧告を受けた者の住所(法人にあっては、その主たる事務所の所在地)
三 勧告の内容
四 前三号に掲げるもののほか、知事が必要と認める事項
第5条(意見陳述の機会の付与)
条例第6条第2項の意見を述べ、証拠を提示する機会(以下「意見陳述の機会」という。)におけるその方法は、知事が口頭ですることを認めた場合を除き、意見及び証拠を記載した書面(以下「意見書」という。)を提出して行うものとする。
- 知事は、勧告を受けた者に対し意見陳述の機会を与えるときは、意見書の提出期限(口頭による意見陳述の機会の付与を行う場合には、その日時)までに相当な期間をおいて、当該勧告を受けた者に対し、次に掲げる事項を書面により通知するものとする。
一 公表しようとする内容
二 公表の根拠となる条例等の条項
三 公表の原因となる事実
四 意見書の提出先及び提出期限(口頭による意見陳述の機会の付与を行う場合には、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)
- 前項の規定による通知を受けた者(以下「当事者」という。)又はその代理人は、やむを得ない事情のある場合には、知事に対し、意見書の提出期限の延長又は出頭すべき日時若しくは場所の変更を申し出ることができる。
- 知事は、前項の規定による申出又は職権により、意見書の提出期限を延長し、又は出頭すべき日時若しくは場所を変更することができる。
- 知事は、当事者に口頭による意見陳述の機会を与えたときは、当事者又はその代理人の陳述の要旨を記載した書面を作成するものとする。
- 代理人は、その代理権を証する書面を、意見書の提出期限又は出頭すべき日までに知事に提出しなければならない。
- 知事は、当事者又はその代理人が正当な理由なく意見書の提出期限内に意見書を提出せず、又は出頭すべき日時に口頭による意見陳述をしなかったときは、条例第6条第1項の規定による公表をすることができる。
附則
この規則は、平成16年10月1日から施行する。
まとめ
以上条例・規則に基づき、宅地建物取引業者は契約に先立って、原状回復等に関する法律上の原則や判例により定着した考え方を借受け予定者に説明しなければなりません。
- 費用負担の一般原則として、経年変化及び通常の使用による住宅の損耗等の復旧費用については、賃貸人の負担となります。
- 賃借人の故意・過失、通常でない方法による使用等、賃借人の責めに帰すべき事由による住宅の損耗の復旧費用は、賃借人の負担となります。
- 以上とは異なる特約を結ぶ事も可能ですが、それらがすべて認められるわけではなく、内容によっては無効とされることがあります。
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